1月21日から金沢文庫で運慶展が始まりますが、その前に県立機関活用講座「運慶を学ぶ」が開催されており、それを受講しています。本日はその四回目で「運慶の評価をめぐって」でした。興味深いと思った箇所を以下に紹介します。

・親鸞が書写し校了した法然の法話などを収録した「西方指南鈔」に、仏像製作者として「運慶・康慶」の名が引き合いに出されている。

つまり、仏像にそれほど重きを置かない浄土宗の人々からも仏師といえば、運慶と考えられていたことになります。また、運慶と並んで、康慶の名前が挙げられているのも興味深いですね。

・東寺大仏師職というものがあり、補任される決め手は運慶からの系譜上の正統性だったそうで、その為、補任の際にしばしば相論があったそうです。
兵庫県・如意輪寺にある、東寺大仏師・康俊作の如意輪観音像の銘文には「運慶五代孫」、京都・智恩寺にある、東寺大仏師・康珍作の大日如来像の銘文には「運慶十一代」と書かれているそうです。

つまり、運慶の偉大さを声高に唱える後継者たちが運慶の没後も長期にわたり、存在していたことになります。東寺大仏師に補任される決め手が運慶から系譜上の正統性ということは、運慶が東寺・講堂の仏像を修復したのが理由でしょうから、運慶の修復は印象に残るものだったのでしょうね。

・明治30年に古社寺保存法が制定され、国宝の資格を得たものの中で、17件の仏像に「伝運慶作」の名称が付加されたそうです。
 六波羅蜜寺の運慶像
 万寿寺の金剛力士像
 法界寺の十二神将像
 浄瑠璃寺の四天王像
 八坂神社の狛犬
 金剛寺の大日如来像、降三世明王像、不動明王像
 興福寺・東金堂の維摩居士像、文殊菩薩像
 海龍王寺の文殊菩薩像
 秋篠寺の伎芸天像
 清浄心院の阿弥陀如来像
 浄智寺の地蔵菩薩像
 円応寺の閻魔像、初江王像、倶生神像

しかしながら、現在、それらのうちで運慶作と考えられているものは1件もないそうです。

上記の伝運慶作の中には、なぜ、これが伝運慶作と考えられていたのだろうと思うものがあり、興味深いです。
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