6月6日にお寺めぐり友達の方々と一緒に奈良散策をしましたので、その時の話を書きたいと思います。まず最初に訪れたのは矢田寺です。

拝観料400円を払い、塔頭寺院に立ち寄りながら広い境内を歩くと本堂に到着しました。特別に内陣参拝ができるようになっていましたので、拝観料500円を払って中に入りました。

周りには十六羅漢の襖絵があり、中央の立派な厨子の中には、真ん中に地蔵菩薩像、向かって右に十一面観音像、左に吉祥天像が祀られていました。
一般にお地蔵さんは右手に錫杖を持っていますが、矢田寺のお地蔵さんは錫杖を持つ代わりに第一・二指を丸め合わせています。この珍しい印相から「矢田型地蔵」と呼ばれています。近くで拝観しましたが、確かに手で輪っかを作っています。手で輪っかを作る印相は阿弥陀如来の印相ですから、地蔵菩薩に阿弥陀如来のご利益を併せ持ったものが矢田型地蔵ということでしょう。

脇に十一面観音像と吉祥天像が祀られていますが、元々は十一面観音と吉祥天が祀られており、後から地蔵菩薩が祀られたそうです。吉祥天像は色が結構残っており、印象に残りました。

四天王の二体も祀られており、いらしたガイドの方によると唐招提寺の四天王に似ているそうです。また、厨子は桂昌院が立て直した厨子だそうです。本当に桂昌院は色々なお寺を再興していますね。

左奥には弘法大師像があり、裏には試地蔵菩薩像、右奥に阿弥陀如来像が祀られていました。試地蔵菩薩像には以下のような話があります。

 矢田寺の満慶上人は小野篁と一緒に地獄に行きました。そこで、猛火の中を必死で衆生を救っている地蔵菩薩に出会います。地蔵菩薩は満慶上人に「現世に戻ったら、人々に私と縁を結ぶよう勧めなさい。そうすれば救ってあげられます」と言いました。

 地獄から戻った上人は地蔵菩薩を思い出すままに彫りますがうまくいきません。そこに四人の翁(春日四社明神)が現れ、上人が地獄で出会ったお姿そのままに地蔵菩薩を彫りあげました。

 春日四社明神が彫った像が御本尊となり、満慶上人が彫った像は「こころみの」地蔵として祀られることになりました。

試みの地蔵菩薩像という名前ですが、御本尊もこちらの像もどちらもありがたく感じるものでした。また、阿弥陀如来像を拝観していると、ガイドの方が蓮華座ではなく、八角形の台座に座っていると教えてくれました。言われてみると確かにそうで、なかなか気づかないものです。

本堂を拝観した後、あじさい園を散策しました。さすがにアジサイで有名な矢田寺だけあって、あじさい園はとても広かったです。訪れた時はまだ咲き始めという感じでしたが、咲いているアジサイは美しく、最盛期はさぞかし見事だろうと思いました。

しかしアジサイを見て、美しいと思うだけではお寺で花を見るには不十分です。案内には、
 アジサイの花びら一つ一つが様々に色を変えて、とどまるところのない世の無常を伝えています。
の旨が書かれています。お寺では何気なく感じることでも意味のあることがありますし、自分なりの解釈をすることもできます。お寺めぐりでは、学ぶ心を常に持っておくことが大切ですね。矢田寺はそのことに改めて気づきました。




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