「上杉家の家臣として山形県米沢市で晩年を過ごした前田慶次郎ゆかりの場所が米沢にはあるんだろうな。訪れたいけど、今回は仏像ツアーなので寄ることもないだろう」と考えていましたが、なんと、堂森善光寺が前田慶次郎ゆかりの場所でした。
バスを降りて本堂に向かいますが、本堂への参道脇には小さいながらも前田慶次郎グッズ等を売っているお店もあり、気分が盛り上がります。一人で来ていたら誘惑に負けてお店に立ち寄っていたかも知れませんが、今回は団体ですので、まっすぐ本堂に向かいました。

お寺の方の案内のもと、お堂の中に入ります。善光寺という名前の通り、中央には善光寺式阿弥陀三尊像が祀られていました。右に毘沙門天像、そして左に注目の見返り阿弥陀像が安置されていました。
善光寺式阿弥陀三尊は米沢地方で造られたものだそうです。ですので、像は銅製ですが中が空洞になっておらず、重さが阿弥陀像で36キロ、観音、勢至像はそれぞれ18キロもあるそうです。
見返り阿弥陀像は日本に何体かありますが、一番古いものは京都の永観堂のもので、二番目に古いのがこちらの像で、鎌倉時代の作だそうです。見返り阿弥陀像と呼ばれている像の中には首だけ見返っているものもありますが、こちらの像は全体で見返っているのが特徴です。
なぜ見返っているかというと、娑婆世界におりてきて、極楽浄土に戻る時、魂がついて来ているかを確認しているからだそうです。
平成5年に修理し、カツラで作られていることが分かったそうです。カツラは関西では使わないそうで、よって、関東の仏師が造ったものだそうです。
かっては阿弥陀信仰が盛んでしたが、現在はもう一度この世に生まれたいという人が多いので、観音菩薩や不動明王などの現世利益を与えてくれる仏様に対する信仰の方が強いそうです。
お堂の左に撫で五鈷杵があり、撫でてから仏像を近くで拝観しました。見返り阿弥陀像は本当に素晴らしい像でした。特に目が合う位置から拝観したお姿はとてもありがたく感じました。
前田慶次郎とお寺の関係が分からなかったので訪ねるとお寺の裏に前田慶次郎が住んでいたそうです。ということは、前田慶次郎も見返り阿弥陀像を拝観したということですね。天下一の傾奇者(かぶきもの)はどのようにお参りしたのか色々と想像します。
お堂の右側には前田慶次郎供養塔がありましたので、手を合わせました。そして、売店に行きました。色々グッズが売っていましたが、「大ふへん者」Tシャツを購入しました。
前田慶次郎は東北の関ヶ原の戦いと呼ばれる長谷堂城の戦いの際、「大ふへん者」と書かれた旗指物で現れました。昔は濁点を書かなかったので、それを見た上杉家の武士達は「大ぶへん者=大武辺者(特に武勇の優れた者)」と読み、「新参者の分際で」と咎めました。
すると慶次郎はこれは長年の浪人暮らしで金銭にも不自由しているから「大ふべん者=大不便者」と読むのだと言った傾奇者らしい逸話があります。
堂森善光寺では、素晴らしい仏像に会うことができ、また前田慶次郎の話で盛り上がることもでき、とても楽しいお寺巡りとなりました。「終わりよければすべてよし」ではありませんが、最後の堂森善光寺が良かったので、今回のツアーは今までの中でも特に気持ち良いツアーだったなと今思い返しても思います。
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