庭園には3つの工夫があるそうです。
1つ目は借景です。庭の面積はさほど大きくはありませんが、生垣を低くして、高台寺山を大きく借景し、更に山中に石灯籠を立てて、遠近法を活用して、庭と周辺の山景を一つに結びつけ、庭に広大さを感じさせています。
2つ目は石です。中心に烏帽子岩(あるいは合掌石)と呼ばれる石が置かれています。また、豊臣秀吉が寄進したといわれる誰が袖手水鉢(たがそでちょうずばち)もあります。
3つ目は樹木です。音羽山腹には四角形や円形に刈り込んだ樹木が幾重にも重なり、自然に山の大樹に融合しています。
庭園は撮影禁止だったので、写真はありませんが、とても素晴らしいものでした。ゴールデンウィークと秋にも公開されるそうで、その時期の方が樹木も綺麗だと思います。
成就院といえば、月照上人を忘れてはいけません。成就院の住職であった月照上人は安政の大獄で追われる身となり、西郷隆盛と共に京都を脱出し、薩摩藩に逃れました。しかし、薩摩藩は厄介者である月照の保護を拒否しました。そのため、月照は死を覚悟し、西郷と共に入水自殺しました。月照はこれで亡くなりましたが、西郷は奇跡的に一命を取り留めました。
月照上人と共に薩摩に行き、上人の遺品をお寺に持ち帰った者がおり、清水寺はそのことに感謝し、その者に境内で茶屋を開くことを許可したそうです。
また、幕府側に捕らえられ、「月照上人がどこに逃げたか」を厳しく尋問された者もいたそうです。その者は自分はいずれこの厳しい尋問に負け、月照上人の居場所を白状すると考え、舌を噛んで自殺したそうです。清水寺はその者の遺族に対しても境内で茶屋を開くことを許可したそうです。
前者の茶屋が忠僕茶屋、後者の茶屋が舌切茶屋で、現在も境内にあります。清水寺の境内に茶屋があるのは知っていましたが、そのような歴史があるとは全く知りませんでした。成就院では庭園よりも、茶屋の話の方が印象に残りました。今度、清水寺を訪れた時は茶屋に立ち寄ろうと思います。

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