(1) 先週行われた光明寺の講演会で清水眞澄さんによる「光明寺と鎌倉彫刻」を拝聴して、展示会の仏像に関して気づいていないことが多かったから
(2) 光明寺の講演会で割引券を頂いたから
(3) 本日の午後2時より、担当学芸員による列品解説があるから
午後1時40分頃に鎌倉国宝館に到着し、入館すると中は人で一杯です。今まで何度も鎌倉国宝館を訪れていますが、今までで一番人が多かったと思います。解説が始まる時に学芸員の方が言っていましたが、NHKで紹介されたのだそうです。だから、たくさんの人がいたのですね。
解説が始まる14時まで一通りの展示を拝観しました。前回訪れた時には法事により一時お寺に戻っており、展示されていなかった教恩寺の阿弥陀三尊像をゆっくりと拝観しました。
14時になり、いよいよ解説の始まりです。まずは今回の展示の目玉である浄楽寺の運慶作・阿弥陀三尊像から解説です。頬の張った顔立ち、たくましい体、衣紋の表現など関東を代表する運慶仏だと話されていました。
「浄土宗三祖と光明寺世代像」では、法然上人の像が展示されているのですが、法然上人の像は手の形に特徴があるそうです。法然上人は必ず、右手を上、左手を下にして、数珠を持っているのだそうです。二祖の聖光上人像も法然上人と同じ手の形をしています。これは後継者争いが熾烈で、自分が第二祖であると主張するために同じ手の形をしているそうです。
光明寺二世寂恵上人の像は後年の厚い彩色がとられており、禅僧のような雰囲気です。隣に祀られている九世観譽祐崇上人が光明寺の有名な「お十夜法要」を始めた方だそうです。
「光明寺の本尊と彫刻」では、光明寺の御本尊である阿弥陀三尊像が展示されています。お寺ですとかなり離れた所からしか拝観できないので、間近に拝観できる良い機会だと話されていました。光明寺の講演会で、三尊像は体と着衣の金箔の色が違うのですが、これはわざとこのようにしていると話していました。確かに体よりも着衣の方がより金色でした。
「運慶・快慶と阿弥陀仏」では、運慶様式の阿弥陀如来立像が二体展示されています。運慶様式の特徴は左胸辺りに着衣をつなぐ「輪っか」のようなものが刻まれていることだそうです。二体とも輪っかがありますので、これから訪れる方は是非、そこを注目してください。
運慶様式の阿弥陀如来立像のうち、一体は個人の方が所有しているものです。ある時、夢の中に阿弥陀如来が現れ、「鎌倉に行きたい」とおっしゃったそうです。そこで、鎌倉国宝館で保管されるようになったそうです。
もう一体の山梨九品寺の阿弥陀如来立像は、脇侍の観音、勢至菩薩は後ろの衣が特徴的です。斜めから確認することができますが、衣が後ろに伸びています。これにより、スピード感を表現しているそうです。
教恩寺の阿弥陀三尊像は重たいそうです。よって、中に何か納入品があるのではないかと考えられるそうです。また三尊像は平重衡ゆかりの像と考えられているそうです。
前回の訪問での記事において、栃木・地蔵院の観音、勢至像に関して、「なぜか顔が青っぽく、観音様という気がしませんでした」と書きましたが、これは江戸時代の修復で良い金を使わなかったので、変色してしまったからだそうです。
伊豆の上常行堂に祀られていた宝冠阿弥陀如来像が展示されていました。下常行堂に祀られていた阿弥陀如来像は現在、広島の耕三寺に安置されており、納入物から快慶作であると分かっているそうです。よって、今回展示されている阿弥陀如来像も快慶作の可能性が高いそうです。脇侍は上常行堂でなく、下常行堂に祀られていたそうです。
滋賀県・阿弥陀寺の阿弥陀如来像は快慶の弟子である行快の作です。お寺では厨子の中に安置されており、お顔の部分が少し拝観できるだけだそうです。よって、全体が拝観できる今回の展示は貴重だと話されていました。
「光明寺の絵画」では、国宝の「当麻曼荼羅縁起絵巻」が注目です。こちらの絵がポスターや図録の表紙に使われています。この絵巻を見るために北海道から来た方もいたそうです。
平安時代の阿弥陀三尊来迎図は三尊が正面を向いていました。これは図を見ながら観想するためだそうです。しかし、法然上人により、南無阿弥陀仏と唱えるだけで往生できるという考えが広まりましたので、正面を向く図は少なくなっていったそうです。
「法然上人とゆかりの名宝」では、法然上人の一生を描いた法然上人絵伝がありました。たくさんの人が描かれていますが、法然上人はこの記事の前の方で述べた手の形でどの人が法然上人か分かるそうです。よって、「ウォーリーをさがせ」ではないですが、「法然上人をさがせ」みたいなことができるそうです。
清凉寺の迎接曼荼羅は、法然上人から熊谷直実に与えたものという説があるのですが、最近の研究では本当にそうだと言われているそうです。そうだとしたら、とても貴重なものですね。
二河白道図もありました。今まで、浄土宗のお寺を訪れた時に二河白道をイメージしたものがあったのですが、どのようなものか今一分かりませんでした。しかし、図を見るとどのようなものかよく分かりました。
図には、下に娑婆世界が描かれており、生・老・病・死が書かれています。此岸と彼岸を結ぶ白道の両脇には、憎悪の世界を表す火の川、愛欲の世界を表す水の川が描かれています。此岸には釈迦如来が白道を渡って彼岸を目指す者達を見送っており、白道の先の彼岸では阿弥陀三尊が出迎えています。
「光明寺の歴史と周辺」では、良忠上人の書状が展示されていました。字がかなり乱れているのですが、これは病気で伏せた後に書いたから乱れているそうです。
展示解説は1時間10分ほどでしたが、あっという間に時間が過ぎたという感じでした。大きな声で話され、とても分かり易かったです。説明によって、初めて分かったことがたくさんあり、二週連続となる展示会ですが、訪れて良かったと思います。
下の写真は今年の9月に京都の直指庵を訪れた時にあった二河白道です。

案内

二河白道の庭
カテゴリ
タグ