ある不動尊霊場の寺院を訪れた時の話です。ある方が話しかけてこられ、私が「不動明王の霊場があって、この寺院はその札所だから来ました。」というと、その方は不動明王の霊場があることを知らず、「そのような霊場があるのですか。」と言われ、四国八十八箇所と坂東三十三観音は巡ったことがあると言いました。ここまではごく普通の会話ですが、その後の言葉に少し戸惑いました。

 その方は「観音様のほうがお不動さんより力があるそうですよ」と言われました。私は観音様もお不動様もどちらもありがたい仏様だと思っているので、「どちらも同じぐらいの力があると思いますよ」と答えました。その方と別れた後もなぜあのような言葉を言われたのかずっと気になりました。しばらくたって多分、以下のような理由だと思いました。

 よく知られているように仏様は、
・如来
・菩薩
・明王
・天
に分けることができます。如来は悟りを開いた方、菩薩は悟りを開くために修行中の方です。よって如来、菩薩の順に力があると考えることもできます。この考えに従うと観音様は菩薩、お不動様は明王なので、観音様のほうがお不動様より力があると言えます。

 例えば、観音様がお不動様より10倍力があるとします。しかしその値は、人間の力を一とすると、観音様は千兆、お不動様は百兆(もっと大きいかも知れません)と、人間の一から見るとどちらもはるかに大きな値で、10倍大きいなんてもはや関係ないと思います。観音様、お不動様、どちらも素晴らしい仏様です。
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