月刊致知5月号に掲載されている塚越応鐘さんの「今回は最高」より。

生け花の流派である「松風流(現・いけばな松風)」を創流した祖母の教えでいまでも実践していることが主に2つあります。

一つには「弟子から盗め」という教えです。
いくら自分に才能があっても、弟子が百人いれば百通りの才能、表現方法があるのだから「こういう表現があったのか」と学べること、吸収できることはたくさんあると祖母は言うのです。
私はこれまで何千人という弟子を指導してきましたが、確かに祖母の言う通り、それぞれが一所懸命生けた作品には、それぞれ個性があり、学ぶべきことがたくさんあります。指導する立場になったからといって慢心せず、あらゆることから学ぶ姿勢が一道を極めていく上では大切です。

もう一つは「個性を殺さない」という教えです。
弟子の作品を指導する過程で花を切ったり、挿し替えたりして、まるで自分の作品のようにしてしまう先生がいますが、それでは一人ひとりに備わった個性、持ち味を生かし育むことはできません。弟子の個性を殺すことなく持ち味を生かす指導というのは非常に難しいことですが、私は祖母の教えを常に意識してきたことで、弟子たちは皆、素晴らしい作品を生けられるまでに成長してくれました。祖母の教えは間違っていなかったのだという思いをいま改めて深くしています。
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