仏教の根本思想は「縁起」です。生と死も縁起の関係にありますので、別個に独立して存在するものではありません。生に縁って、死が起こり、死に縁って、生が起こります。つまり、生と死は、紙の裏と表のように、二つで一つの事象で、分けられません。死にきるためには生ききることが必要であり、生ききることでしか、死にきることはできないとなります。
造花を美しいと思わないのはなぜでしょうか。枯れないからです。枯れないので、その花の美しさは今しかない、という感動にならないのでしょう。桜が年中咲いていたら、きっと味気ないでしょう。人間も死ぬからこそ生きている今というこの瞬間がかけがえのないものとなります。ですから、後悔しないように、人は努力し、また努力することに意味をも見出していきます。
法然上人は、人間として生まれてきたこと、そして仏の教えに出会えたことに感謝しています。現状を当たり前と考える人間には、感謝の念は起こらないでしょうし、今を充実させて生きようとする動機づけも持てないことでしょう。
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