伊藤園時代、私はマーケティングに必要なことはすべて実体験を通じて学んできたわけですが、その一方で本庄正則会長から指針となる二つの教えをいただきました。
一つは「運七割、実力三割」というもので、会長は折に触れて、自分の力というのは大したことはないと話されていました。それよりも運が大事で、これは人間関係をよくすることによって、もたらされるのだとおっしゃるのです。つまり、企業というのは、そこにいる人間が動かしているのだから、良好な人間関係を築けずして、何事もなし得ないというわけです。
そしてもう一つは「できないと言わない、思わない」。何事も始めから「できない」という考えに陥ることなく、「できる」から考えろという会長の考えは、私の発想力を豊かにする土壌になったと断言できます。
壁は突破することに意義があるのです。もっとも、壁にぶち当たった時、すぐにそれを壊そうとする人もいますが、それだけが能ではありません。特に組織で働く人の場合、壁を全部壊そうとするとかえって、自分の首を絞めることにもなりかねません。時にはその壁をよじ登ったり、下から掘ってみたりと、要は壁の向こう側に辿り着ければよいのです。私はよく自分自身に「急がば回れ」と言い聞かせてきましたが、そうやって必死に「あきらめない力」を鍛えていたのかもしれません。
カテゴリ
タグ