鎌倉国宝館では、土曜日に学芸員の方による展示解説がありますので、毎回、それに合わせて、訪れています。
毎年この時期に鎌倉の至宝展が開催されていますが、今回の注目は、今年度新たに鎌倉市の有形文化財に指定された5件の展示だと思います。
・青蓮寺 十一面観音像
今回の展示を紹介するポスターに掲載されている観音像です。
ポスターから大きな像を想像しており、実際、拝観した時、思ったより小さいなと思いました。高さは約150センチぐらいでした。
特徴は、手が四本あることです。胎蔵界曼荼羅には手が四本の観音像が描かれているそうですが、像としては、珍しいです。
現在は青蓮寺に安置されていますが、元々はどこのお寺で祀られていたかは分からないそうです。しかし、造形から、奈良周辺で造られたと考えられるそうです。
確かに武家好みの像というよりは、整って落ち着いた雰囲気は、公家に好まれそうな気がしました。
・南都八景図
南都とは、もちろん奈良のことで、南都八景は以下のとおりです。
(1) 南円堂 藤
(2) 佐保川 蛍
(3) 猿沢池 月
(4) 春日野 鹿
(5) 三笠山 雪
(6) 雲居坂 雨
(7) 東大寺 鐘
(8) 轟橋 旅人
ゴールデンウィークに奈良を訪れたので、南円堂の藤は正にそのとおりだなと思いました。
・多聞院文書
後白河法皇が新熊野神社に安房国の土地を寄進した古文書が展示されていました。
その土地は巡り巡って、多聞院が別当寺であった熊野神社の所有になったので、過去の権利書も多聞院が管理しています。
・相州鎌倉江之島図
江戸時代に描かれた鎌倉と江ノ島の地図で、富士山も描かれていました。観光用に造られたのでしょうか。
地図に書かれた文章には、源光圀とあり、水戸光圀は確かに鎌倉には来ていますが、光圀が書いた文章ではないと考えられているそうです。
・宝塔文勧進札版木
勧進とは、寺院を建立、再建する際に、民衆から寄附を募ることですが、そのための御札をするための版木です。
鎌倉時代に遡る勧進用の版木は貴重とのことです。
中道寺建立のための勧進で、中道寺というお寺は鎌倉にはなかったので、鎌倉に来て、勧進を行ったと考えられるそうです。

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