「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」
福沢諭吉「学問のすゝめ」の冒頭にある有名な言葉です。諭吉はここで、人間はみな平等につくられていることを高らかに宣言しています。
しかし、そのすぐ後に
「されども今広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかな人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや」
といって、この世の中に貧富や貴賎の差があることを指摘しているのです。
なぜ平等に生まれたはずの人間に差ができてしまうのか。諭吉はその理由を次のように言っています。
「実語教に「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」という言葉があるように、賢い人と愚かな人の差は学ぶか学ばないかによって決まるのだ」
日本の近代化を開いた「学問のすゝめ」は「実語教」を下敷きとして書かれたものだったのです。
「実語教」という本は、平安時代の終わりにできたといわれてます。子供たちの教育に使われ、鎌倉時代に普及し、江戸時代には寺子屋の教科書となりました。なんと千年以上も受け継がれてきた子供の教科書なのです。
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