月刊致知3月号に掲載されている、白駒妃登美さんの「歴史が教える日本人の生き方」より。

私は高校受験の頃から欧米流の成功哲学を信じて生きてきました。「誰にも負けたくない」との思いでそれを実践し、叶えたい夢は次々に叶っていました。

これら成功哲学の特徴の一つは「善・悪」「損・得」、「勝ち組・負け組」といった二次元論に基づき、いかにしたら人生や仕事の勝者になるかを説いている点にあります。

こういう目標達成型の哲学は、受験に合格する、資格を取得するという短期間の目標については確かに有効な手段かもしれません。

しかし、長くこの思考に浸かってしまうと「もっと、もっと」と欲望が際限なく広がり、達成感は得られても安心感や幸福感、心の底からの自尊感情は生まれることがありません。逆に敗北を恐れる気持ちばかりが高まるようになります。少なくとも私はそうでした。

西洋の成功哲学に代表される「目標達成型」とは別に「天命追求型」があります。天命追求型とは将来の目標に縛られることなく、自分の周囲の人の笑顔を何よりも優先しながら、いま、自分の置かれた環境でベストを尽くす。

それを続けていくと、天命に選ばれ、いつしか自分では予想もしなかった高みに到達するという考え方です。そこでは、自分の夢だけを叶えるfor meより、周囲に喜びや笑顔を与えるfor youの精神、つまり志が優先されます。
カテゴリ
タグ