月刊致知3月号に掲載されている、登山家・栗城史多さんの「終わりなき頂上への挑戦」より。

・私は山登りを通して、苦しみには三つの特徴があることに気づきました。一つは、「苦しみは闘おうとすればするほど、その苦しみは大きくなっていく」。もう一つは、「苦しみから逃げても、どこまでも迫ってくる」ということです。

そして特徴の三つ目は、「苦しみは必ず喜びに変わる」ということ。例えば、高尾山のような低い山は簡単に登れてしまうので、登頂してもあまり感動は湧いてきません。しかし、八千メートル峰を登頂した時は、それまでの苦しみが大きい分、得られる達成感も半端じゃない。苦しみの分だけ、喜びがある。だから、苦しみも決して悪いものじゃないと考えています。

・八千メートル峰は無酸素ではずっと生きられません。そこへは酸素ボンベを使って、グループで登っていったほうが死のリスクは低くなりますが、私はそれをやるかといったら絶対にやりません。

それは安全で、堅実であるがゆえに、自分の力を百パーセント出さなくても登れてしまいます。自分の全力を出さないで登頂したとしても、それは単なる記録であって、私にはあまり価値を感じられません。

大切なことは、登頂までの過程で、いかに自分の百パーセントを超えた、百十パーセント、百二十パーセントの未知なる領域に辿り着けるかということです。

・私がエベレストを登頂できずに下山して帰ってくると、周りから「失敗した」って言われるんです。でもそれはちょっと違います。成功の反対は失敗ではなく、本当の失敗とは「何もしないこと」です。

私は山登りを通して、挑戦し続けていく先に必ず登頂や成功があるのだと確認しています。だからこそ、諦めないことの大切さを伝えていきたいと思っています。
カテゴリ
タグ