浄光明寺を訪れた後、金沢文庫で開催されている愛染明王展に行きました。

愛染明王は六臂で、三つの手の組みは
(1) 右手で矢、左手で弓を持つ
(2) 右手で五鈷杵、左手で五鈷鈴を持つ
(3) 右手は未敷蓮華を持つが、左手では何も持たない
となっています。

愛染明王に祈祷する時は、(3)の何も持っていない左手に様々なものを握らせたそうです。

法勝寺・八角円堂の愛染明王画がありましたが、左手に三本足の鳥が描かれた日輪を持っていました。これは皇子の出産を願ってのことだそうです。

左手に赤いものを持たせることもあるそうで、これは肝を表しており、人黄(人王)、つまり、人間の生命のエッセンスを表しているとも言えるそうです。そして、延命祈祷の場合は、赤いものを大切に扱い、調伏法の場合は握りつぶすのだそうです。

オシドリの羽根を二枚握らせて、仲良くなりたい場合は二枚の羽根を重ね、別れたい場合は二枚の羽根を×の形で重ねて、祈祷したそうです。

また左手に握らせるよりも愛染明王像の口にくわえさせる、それよりも行者の口にくわえさせるほうが効果があると考えられていたそうです。

以上のような、愛染明王に色々なものを握らせる話は興味深かったです。

右の第二手でつかんだ矢を左の第二手の弓につがえるポースをしている愛染明王は仁和寺円堂様と呼ばれるそうで、画が展示されていました。

西大寺の愛染明王のお前立ちも展示されていました。西大寺の愛染明王は元寇の役の時、叡尊が祈祷するとそれに答えて矢を放ち、元は退散したと言われている霊現仏です。ですので、西大寺の愛染明王像は右第二手に矢を持たないのが特徴です。

展示の最後に愛染明王の梵字の形をしたヘビの画(愛染田夫本尊)が展示されていました。これは愛染明王と田の神である宇賀神が融合したものだそうです。上述したように愛染明王は祈祷が主でしたので、貴族などの身分の高い人の為の仏でした。しかし、宇賀神と融合したことにより、一般の人々の為の仏にもなったそうです。

愛染明王展は今まで知らなかったことが色々学べて、とても有意義でした。残念だったのは図録が売り切れていたことです。金沢文庫の人が予想していたよりもはるかにたくさんの方が来館したのでしょうね。


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