本日は鎌倉国宝館が開催されている特別展「鎌倉×密教」を鑑賞に行きました。平成23年度展示案内が発表されてから楽しみにしていた展示で、期間中の毎週土曜日は14時から担当学芸員による列品解説がありますので、それに合わせて訪れました。

展示室に入ると大日如来像が四体展示されていました。最初は修禅寺の大日如来坐像です。出品リストを見た時、最もお会いしたいと思った像で、拝観した瞬間、慶派らしい像だなと感じました。

隣は宝生寺の大日如来像。元は覚園寺にあった像だそうで、修禅寺像より時代は下りますが、悪い像ではありません。両像を比べた時、修禅寺像は背筋をまっすぐ伸ばして座っていますが、宝生寺像は少し猫背になっていると解説があり、確かにその通りでした。

宝金剛寺の大日如来像はもっと大きな像を想像していましたが、像高38センチの像でした。銅製で、頭部の髻(もとどり)が修禅寺像のようにまっすぐ伸びてなく、平安時代の様式だそうです。

大日如来像の次は不動明王像が展示されていました。三井寺の不動明王像が展示されていましたが、これは中央に展示されている今回の目玉である明王院の不動明王像と制作年代が近いので展示されているそうです。

明王院の不動明王像は頭部の巻き毛の激しさ、足の部分の衣の畳み方が装飾が強いスタイルで、それから肥後定慶作と考えられているそうです。本像は鎌倉を代表する不動明王像で、中央の仏像にも負けない素晴らしいものだと感じました。

覚園寺の阿シュク如来像が展示されていました。覚園寺には何度も訪れていますが、覚園寺での拝観では遠くからしか拝観できない像ですので、近くで拝観するのは初めてでした。とても立派な像で、長い間、眺めていました。

来迎時の如意輪観音像は土紋が残っており、鎌倉を代表する仏像だと思います。土紋は鎌倉地方の仏像にしか見られない特徴で、鎌倉周辺では受けたが、その他の地域では受けなかったようです。造られた当初は凄く派手な像だったと考えられるそうで、是非、造られた当時の像を再現してもらいたいと思います。

寿福寺の四臂の十一面観音像が展示されていました。四臂なのが珍しいと思いましたが、胎蔵曼荼羅上に描かれているそうです。

極楽寺の文殊菩薩像は頭に五つの髻を結んでいます。これは五字の真言を有する密教特有の像だそうです。隣には右手に剣、左手に経巻を持つ普賢菩薩像が展示されていました。右手に剣、左手に経巻を持つのは文殊菩薩像ですが、密教の普賢菩薩像では剣を持物とすることもあるそうです。

琵琶を弾く弁財天像は大日経などの密教経典に説かれているそうです。鶴岡八幡宮の本像は裸体に着物を着せており、展示はされていませんが青蓮寺の弘法大師像も裸体に着物を着せるタイプであり、両像とも元は鶴岡八幡宮寺にあったものなので、鎌倉における裸体像の意味に関しては現在も研究されているそうです。

浄妙寺の三宝荒神像はお寺で一度拝観したことがありますが、展示されているとは知らず、驚きました。三面六臂の像で、仏教正統の経典には登場せず、本地垂迹説の中で成立した尊格で、日本で誕生した数少ない密教尊像だそうです。六臂の内、一番上の二臂は月と太陽を持っており、残りの四臂は愛染明王と同じく、五鈷杵と五鈷鈴、矢と弓を持っていました。

五島美術館と青蓮寺の愛染明王像が並んで展示されていました。青蓮寺の愛染明王像は関東大震災で大破しましたが、この度修理が施され、旧観に復しました。青蓮寺像は五島美術館像を模したそうですが、両像を比べると、五島美術館像のほうが圧倒的に良いです。まさに鎌倉を代表する愛染明王像です。

以上紹介したように鎌倉の素晴らしい密教像が展示されており、訪れる価値は十二分にあります。


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