天寧寺の次に訪れたお寺は、湖東三山の一つである西明寺です。バス停でバスを降り、そこから山門をくぐって、長い参道を歩きました。西明寺は昨年の秋に訪れたので、景色が懐かしかったです。庭園出入口で御住職さんが待っておられ、そこから御住職さんの案内の下、西明寺の取材(?)です。

まずは前庭で不断桜を鑑賞しました。先程歩いてきた参道沿いにも不断桜がありましたが、前庭にも不断桜があります。毎年九月に咲き始め、十一月に満開になるそうです。その時、西明寺の境内ではモミジが赤く染まっていますので、紅葉と桜のコントラストがとても綺麗なのだそうです。


訪れた時も少し花が咲いていました

次は蓬莱庭(ほうらいてい)の鑑賞です。池に鶴島、亀島があり、池の背後にある築山は薬師如来の浄瑠璃浄土を表しているそうです。つまり、たくさんある石が薬師如来、日光・月光菩薩、八菩薩、十二神将を表現しているそうです。薬師如来、日光・月光菩薩、十二神将は仏像などでもよく拝観しますが、八菩薩はあまり拝観しない仏様なので尋ねたところ、薬師本願経の中で説かれている仏様だそうです。



説明を聞きながら歩を進め、二天門に続く石段の下まで来ました。織田信長は比叡山に続き、西明寺も焼き打ちにしましたが、石段の上の二天門、三重塔、本堂は焼き打ちを免れ、本堂と三重塔は国宝、二天門は重要文化財に指定されています。

ここで御住職さんが「仁王門と二天門の違いは分りますか」と聞かれました。仁王さんはお寺に入ってくる人を監視しているので、仁王門を通る時は必ずニ体の仁王さんと目が合う。一方、二天門はお寺に入ってくる魔を監視しているので、遠くを見ている。ですので、二天門を通っても二天とは目が合わないという違いがあるそうです。二天門を通る時に確認しましたが、二天像は確かに遠くを見ていました。




どちらの像も格好良いです

そして本堂に入り、外陣に着座して、御住職さんからお寺の縁起、お堂の特徴などを伺いました。一番印象に残ったのは、西明寺の本堂は柱の真ん中まで欄間(らんま)が下りている理由です。これは外陣から内陣に入る時、いい加減な気持ちで入らないようにということを意味しているそうです。


本堂です

外陣から内陣を見ると、ご本尊の薬師如来像は秘仏のため拝観できませんが、脇侍の日光・月光菩薩、十二神将、四天王像を拝観することが出来ました。庭園で教えてもらった八菩薩はどこにと思いましたが、内陣の柱をじっくり見るとうっすら仏様の姿があり、そこに八菩薩が描かれていたそうです。

そして、内陣へ。十二神将は十二支と結びついて、頭に十二支の動物をつけていますが、頭に亥をつけた亥神は肘をついて休んでいるようなポーズをとっているので、西明寺の十二神将の中では一番人気があるそうです。亥は猪突猛進というように一つのことに向かって猛烈な勢いで突き進みがちなので、行動を起こす前に少し考えてみようということを教えているそうです。

十二神将像の中に矢が曲がっていないかを確かめているポーズをとっているものもありました。十二神将像は比較的自由に造ってもよかったのですが、矢が曲がっていないかを確かめているポーズは非常に人気があり、多くのお寺の十二神将に採用されています。皆さんもお寺で十二神将像を見かけた場合は、矢が曲がっていないかを確かめているポーズをとっている像があるか確認してみてください。

ご本尊の薬師如来は秘仏ですので厨子の扉が閉ざされていますが、比叡山のご本尊も薬師如来なので、天台宗では薬師如来は非常に重要な仏様だそうです。ご本尊の入った厨子の前に扉の閉じた小さな厨子があったので尋ねると、虎の上に乗っている寅薬師が祀られているそうです。この像は寅歳に御開帳されるので、去年訪れた時に拝観しました。彦根城は石田三成の居城であった佐和山城から石垣などを持って来ており、病気が蔓延した時は三成の祟りだと恐れたそうです。当時、虎は凄いパワーがある動物だと信じられており、その虎と薬師如来が組むことで、どのような病魔も退散させることができると考え、虎に乗った薬師如来像が造られたそうです。

次は本堂の裏側です。こちらにはたくさんの仏像が安置されています。阿弥陀三尊像が祀られており、ご住職さんが「なぜ、如来に二菩薩がつくか分りますか」と質問されました。二菩薩は慈悲と智慧を表しており、阿弥陀三尊の場合、観音菩薩が慈悲、勢至菩薩が智慧を表わしています。そして、阿弥陀如来は慈悲と智慧の両方を持ちます。仏教において、慈悲と智慧が大切であるということですね。

弁財天像は大河ドラマ「江」で信長と江が竹生島にお参りに行く場面で撮影に使われたそうです。不動明王像も祀られており、説明の中で印象に残ったのは、「お不動さんの顔は怒っているのではなく、一生懸命努力している時の顔である」という言葉です。聞いた時、おっしゃるとおりだと思いました。

親鸞聖人像が聖人の750回御遠忌により公開されていました。両手を衣の中に入れており、数珠を持った一般の親鸞像とは少し異なります。越後に流される時の姿だそうで、越後は寒いので、両手を衣に入れている像にしたのかなと思いました。

本堂を出た後、三重塔の再生活用事業を見学しました。三重塔は前回の修理から37年が経過し、屋根(桧皮葺)の腐朽が目立ってきました。そこで、再生活用事業、つまり、桧皮葺の修理『再生』にともない、積極的に修理現場の公開『活用』をすることにしたそうです。


修理中の三重塔の外観です

見学用通路にしたがって、初重屋根近くに上り、職人さんの修理を見学しました。檜皮を重ねて葺き上げ、それを竹釘を使って、打ち付けていました。このような作業を間近で見たのは初めてですが、根気のいる大変な作業だなと思いました。文化財を守り、後世に伝えることの大切さを知ることが出来ました。これからお寺に訪れて、桧皮葺の屋根を見た時に感じる思いが違ってきます。


作業中です


竹釘を見せてくれました

修理は平成24年3月31日までの予定で、来春には三重塔の特別拝観も予定されているそうなので、その時に再び、西明寺を訪れようと思います。

訪問日:平成23年10月6日


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