雨の中、西福寺に到着しました。開山堂はそれ自体立派な建物ですが、その上に覆いがつけられており、とてもインパクトの強いものとなっています。

パンフレットによると、

 平成11年、雪から御堂を守るための覆い屋根ができました。豪雪地域の危険な雪下ろし作業をしてくれる人がいなくなった為です。150年前の自然にとけこんだ風流な建物は、時代の流れとともに少しずつ姿を変えなければならなくなりました。

とあり、考えさせられるものがありました。



受付から堂内に入り、まずは本堂の拝観です。ご本尊は阿弥陀如来坐像、両脇に観音、勢至菩薩像が祀られていました。西福寺は曹洞宗のお寺なので、普通は釈迦如来像がご本尊でしょうが、歴史的経緯で阿弥陀如来がご本尊です。

本堂には石川雲蝶の襖絵などがあり、それらは素晴らしいものでした。また廊下には雲蝶が施した埋め木がところどころにあり、それらは雲蝶が遊び心をきかせて、ひょうたん、弓矢、花瓶にいけられた花の形などをしています。それらを見つけながら、奥にある開山堂に向かいました。

開山堂の天井一面には「道元禅師猛虎調伏の図」が彫られています。石川雲蝶の一番の大作と言われているだけあり、とても迫力のあるものでした。音声による案内で、どのような内容が彫られているのか解説がありました。そのような案内がないと内容がわからず、美術品としか鑑賞できなくなりますので。案内があってとても良かったです。

道元禅師猛虎調伏は以下のような話です。

 道元禅師が天童山への行脚の途中、山中で一頭の虎と遭遇します。虎が襲いかかろうとしたその時、禅師は持っていた柱杖を虎に投げつけ岩の上で坐禅に入られます。するとその柱杖が黒雲とともに龍と姿を変え虎を追い払い、禅師の身を守ったと言われています。

天井図には、虎、龍が大きく彫られ、鷹や鯉などの生き物も雲蝶の遊び心で登場しています。彫刻は確かに素晴らしいもので、参加した人も口々に褒めていましたが、私には彫刻以外で気になる点がありました。それは道元禅師猛虎調伏の内容です。

物語では「道元禅師は襲いかかろうとした虎に柱杖を投げつけた」とありますが、私の持つイメージでは、道元禅師はそのようなことをする方に思えません。お釈迦様の話で、「捨身飼虎」というものがありますが、それと同様に道元禅師は進んで自分の肉体を差し出すのではないかと思います。

 道元禅師が天童山への行脚の途中、山中で一頭の虎と遭遇します。虎が襲いかかろうとしているのを見た禅師は黙って、岩の上で坐禅に入られます。虎が禅師に噛み付こうとしたその瞬間、禅師の体がまばゆいばかりに光を放ち、それを見た虎は畏れを感じ、逃げていきました。

という話のほうが私にはしっくりきます。
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