「観音さま その優しさに包まれて」に書かれているエッセイの中から最後に立松和平さんの「山で出会った観音さま」を取り上げたいと思います。この話は前回取り上げたひろさちやさんの話と関連があって、あなたは私にとって観音様、私はあなたにとって観音様という話の具体例です。

 立松和平さんは山岳雑誌に連載している「百霊峰巡礼」の為、日光の男体山に登りました。しかしその日は体調がすぐれず、加えて取材をしながらの登山なので、下山するのが遅れてしまいました。足元がどんどん暗くなり、懐中電燈を持っていなかったので、暗闇の中で迷ってしまいました。

 そろそろと進んでいると前方に微かな光が見えました。その地点に行くと、60歳代半ばぐらいの婦人が疲れて一人でしゃがみこんでいました。立松さんはその方のザックを持ってあげ、その方は懐中電燈で立松さんの足元を照らし、無事両人とも下山することが出来ました。その時、立松さんにとってその婦人は懐中電燈で足元を照らしてくれたので観音様、その婦人にとって立松さんはザックを持ってくれたので観音様であると感じたそうです。

 私の観音霊場巡礼の中では、坂東三十三観音の二番札所である岩殿寺を訪れた時、正教観音吉祥塔を教えてくれた方は、私にとって観音様でした。残念ながらその方にとって私は観音様ではなかったと思いますが。
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