新たな地平線を拓いていくためには何が大事か。私は一文字で申し上げるならば「徳」だと考えます。徳の構成内容は幸之助さんを観察しますと三つあると思うんです。
一つは欲です。幸之助さんはいくつになっても公と私の葛藤を抑えるのに苦労したといいますから、その欲のエネルギーというのはすさまじいものがあったと思うんです。ですから経営者はまず、エネルギーの源となる欲が強くなければなりませんが、その欲は我欲ではなく、自分を生かそうとする自己実現欲や、事業を発展させようとする事業欲です。そして幸之助さんは、それらが最終的に社会への貢献欲へ発展したと思うんです。
それから、欲は正しい方向に向かなければなりませんから、二つ目は義。これはビジョン、使命感といってもいいでしょうが、これがないと組織が一致団結しません。
三つ目は愛ですね。社員にただ「こうせよ、ああせよ」と言うのではなく、隣人愛というか、親の情愛ともいうべきもので包むこと。そしてその愛はただ甘いだけのものではなく、厳しさが必要です。
幸之助さんはこうした要素を含む徳を、並外れて持ち合わせていたと思います。
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