寿宝寺はそのような凄い観音様が祀られているとは思えないこじんまりとしたお寺で、到着すると真っ直ぐに収蔵庫へと案内されました。
収蔵庫に入って着座して前を見ると、中央に千手観音像、向かって右に金剛夜叉明王、左に降三世明王が祀られていました。千手観音像が素晴らしいのは当たり前ですが、脇侍の明王像も素晴らしかったです。
まずは説明をして下さるご住職のお母さん(?)と一緒に、今回の地震で被災された方々のために般若心経を唱えました。今まで何度もお寺で般若心経を唱えてきましたが、一番心に響いた般若心経でした。
般若心経を唱えた後、お寺の方の被災者への言葉を聞きながら観音様のお顔を見ていると自然と涙がこぼれ落ちました。
観音像は十一面千手千眼観音と言われるように千本の手の掌の部分に眼が描かれています。これは願いを込めて描かれたそうで、いくつかはまだ残っていました。
また唇には朱色が残っていましたが、造像された平安時代から塗り直しはされていないそうです。
こちらの観音像の特徴は、太陽の光の元で見るお顔と、月の光の元で見るお顔の印象が異なることだそうです。
今見ているお顔は当然、太陽の光の元のお顔です。お寺の方が収蔵庫の扉を閉めて太陽の光が入らないようにし、暗闇の中で灯りを点けました。
そこに浮かび上がったお顔は先程とは全然違う、正に慈悲に溢れたお顔をされていました。こんなにも受ける印象が異なるとは思ってもみませんでした。
太陽の元では密教像らしい少し厳しいお顔、月の元では慈悲に溢れたお顔をされています。これは厳しさと慈悲は片一方だけではなく両方が必要だからと思います。しかし、今の我々には慈悲の観音様が特に必要です。
今回の寿宝寺で拝観した観音様の慈悲の表情はとても心に響きました。これから何度も寿宝寺を訪れることでしょう。そして、その度に今回感じたことを思い出すでしょう。

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