実は薬師寺東京別院に訪れるのは今回が初めてです。秋の宝物特別公開に何度か訪れようと思ったことがあるのですが、機会を逃し、今回が初訪問となりました。
JR五反田駅で下車し、東口から歩いて行きましたが、問題なく到着しました。道は分かり易かったですし、今日が特別公開の初日だったためか同じように薬師寺東京別院に向かう人が何人かいました。
外観はお寺らしくないと聞いていましたが、確かにお寺らしくありません。でも、都心にあるお寺は仕方ないですね。それに外観よりも中身が大切です。
一階にある受付で拝観料五百円を払い、二階に移動しました。中央に御本尊の薬師如来坐像、向かって右に千手観音立像、左に吉祥天立像が祀られており、部屋の右側に聖観音立像、千手観音立像、大般若波羅蜜多経が安置されていました。それらを拝観していると、お寺の方の説明が始まるということで、用意されている椅子に着座しました。
まずは全員で薬師如来のご真言「オンコロコロセンダリマトウギソワカ」を唱えました。こういうのは良いですね。博物館などでの展示ではなく、お寺での展示ですので、信仰という面も忘れてはいけません。
本尊の薬師如来像は奈良県にある本山の薬師寺の薬師如来像をモデルにして造られたとも言われている鎌倉時代の作です。光背は後補ですが、像内に胎内仏があり、その胎内仏の光背を模しているそうです。説明の間、薬師如来像を拝観していました、見ていれば見ているほど、その良さが伝わってくる像でした。
本尊の向かって右に安置されている千手観音像は一目見て、体と顔、手の色が異なることに気づきます。これは体しかない像に顔と手を補作したからです。
当然、ここまで補足する必要があるのかという意見があります。また文化財保存ということならば、顔や手がない状態で保存すべきなのかもしれません。
しかし、顔や手がない像は痛々しいという思うだけで、像に対して手を合わせるでしょうか。薬師寺では美術品ではなく信仰としての仏としてどのような形が相応しいかを考え、結果として、三十三間堂の千手観音像や興福寺の千手観音像などをモデルにして、顔や手を新たに補足したのだそうです。私は薬師寺の考えを支持します。
部屋の右側に祀られている聖観音像は新聞等にも掲載された像です。お寺では江戸時代の十一面観音像として祀っていましたが、修理に出した際、元は平安時代の聖観音像であることが分かった像です。
聖観音像は頭が大きく見えるためか、可愛らしい像に感じました。また像には木目が目立ちました。仏師が木目に何か意味を持たせているように感じますが、どうなんでしょうか。
大般若波羅蜜多経は奈良時代のもので、こちらも新聞等で報道されました。お寺に行った時に僧侶が大般若経を空中で1巻ずつパラパラと広げている姿を見たことがあるかもしれません。大般若波羅蜜多経は六百巻にも及ぶので、全て読むと大変な時間がかかるので、パラパラと広げただけで読んだことにしているのです。
これを転読といいますが、なぜ転ばすという字を使っているかというと、かっては大般若波羅蜜多経は巻物だったので、部屋の隅から隅に転がして広げ、それを巻き戻すことによって、読んだことにしていたからだそうです。
上記以外にも色々な話を聞け、薬師寺の説明は為になることを楽しく伝えてくれるなと再認識しました。今日は時間の関係もあり写経が出来ませんでしたが、今度訪れた時は写経をしたいなと思います。

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