神奈川県立金沢文庫では、平成28年10月28日から12日18日まで、特別展「忍性菩薩 関東興律七五〇年」が開催されています。本日、特別展に関連した月例講座「忍性と鎌倉極楽寺の仏像」を聴講しましたので、印象に残ったことを書きます。

真言律宗は律宗という名前の通り、戒律を重視しており、釈迦如来を大変信仰していました。日本における釈迦如来像といえば、清涼寺の釈迦如来像であり、清涼寺式釈迦如来像は、真言律宗の総本山・西大寺の御本尊であり、鎌倉・極楽寺、金沢文庫が隣接する称名寺の御本尊でもあります。全国に清涼寺式釈迦如来の模刻像がありますが、像があれば、そこに真言律宗の影響があったと考えられるそうです。

忍性は関東に下向した時、まず、茨城県の三村山に滞在しました。三村山周辺には忍性ゆかりの仏像が残っており、展覧会では
・蔵福寺 阿弥陀三尊像
・薬王院 薬師如来坐像(仏手のみ)
・観音寺 如意輪観音坐像
が展示されています。三像とも清涼寺式釈迦如来ではなく、忍性が当時文化の最先端である畿内(奈良)から来たからと自分たちの信仰を押し付けるのではなく、在地の信仰を大切にしていたことが分かるそうです。

薬王院の薬師像は頭部のパネルが展示してあり、頭部は清涼寺式釈迦如来と同じ渦巻状になっています。私自身お寺に訪れた時、頭部だけ、あるいは衣だけ、清涼寺式釈迦如来と同じになっている、阿弥陀如来などの如来像を拝観したことがありますが、何故一部だけそうなっているのか不思議でした。真言律宗の僧が在地の信仰を大切にしつつ、一部だけ自分たちの信仰する清涼寺式釈迦如来の特徴を入れたと考えれば、納得がいきます。

鎌倉・極楽寺には2体の釈迦如来像があり、一体は清涼寺式釈迦如来像ですが、もう一体はそうではありません。そうでない像は多宝塔に安置されており、釈迦と大日如来を同一と考えて造立されたと考えられるそうです。真言律宗なので、真言のほうを重視した像なのでしょうね。

講座はとてもためになるものであり、聴講した後、展示を見ると見方が変わります。来年には、西大寺創建1250年を記念して、東京、大阪、山口の三ヶ所で奈良西大寺展が開催されますので、今から楽しみです。
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